【解説】ダイビングのライセンスは一つだけじゃない?

ダイビングのライセンスというと、唯一無二のもので、「ライセンス取得=何でもできるダイバー」みたいなイメージがあると思います。

しかし、本当にそうでしょうか。

今回は複数存在するダイビングのライセンスと出来ることについて、解説してみたいと思います。

そもそもダイビングライセンスとは何か

まず、スキューバとは何かですが、SCUBAという英語の略称を、読み方として、スクーバまたはスキューバと日本語では読んでいます。
SCUBA=Self Contained Underwater Breathing Apparatusの略で、自給式水中呼吸装置という呼ばれ方を日本語ではしています。

すでにお気づきと思いますが、スキューバとは「装置」のことでダイビング自体とは結びついていなかったのですが、水の中に潜るという行為をするものなので、Dive(潜る、飛び込む)という英語とくっついて、スキューバダイビング(Scuba diving)となりました。

SCUBAは、1943年にジャック・クストゥとエミール・ギャグナン(Jacques Cousteau and Emile Gagnan)によって開発され、ほどなくして、水中の肺を意味する「Aqua-Lung(アクアラング)」と名付けられました。これが現在のアクアラング社の発足に繋がります。今でも海の近くでは「アクアラング・素潜り禁止!」という看板をみると思いますが、スキューバの呼吸装置が日本に入ってきたころにアクアラング社製品であったことから、年配の方はスキューバの器具のことを「アクアラング」と呼ぶ方もいます。スキューバ器材やダイビング器材という言い方も自体が浸透しているのでアクアラングという方は少なくなってきたかもしれません。

その水中式呼吸装置を使って行うのがスキューバダイビング。似たようなもので、SCUBA装置を一切使わないダイビングとしてはスキンダイビングという素潜りもあります。ジャック・マイヨールなど有名なスキンダイバーがいますね。

日本でスキューバ(スクーバ)といえば、レジャーとして一般の方が行うレジャーダイビング(ファンダイビングと呼びます)が主流です。
そのほかにも、テクニカルダイビング(高い技術の要求されるダイビング)やアイスダイビング(流氷、氷河)、メキシコのセノーテなどのように淡水でのダイビングなどがあります。

その中で、ダイビングのライセンスと言ったら、レジャーダイビング用のオープンウォーターダイバーライセンスを指すのが一般通念になっています。

スキューバダイビングのライセンスは、いわゆる公的な機関の発行する「許可証」ではなく、ダイビング技術の指導団体の発行する認定証のことなのです。

もちろん認定証とは言っても、実質的には許可証に近い役割を持っています。特に国内においてはライセンスがないとダイビングのタンクを貸してくれるレジャー施設を探すことは困難でしょう。
従って、ライセンスという顔を持っている認定証と思っていただければいいのではないでしょうか。

ライセンスの種類は複数?

実は、スキューバダイビングのライセンスには種類があります。一つではありません。

これは一般の方には馴染みのないことであることが多いのですが、実はライセンスは複数あります。

正確にいうと、いわゆるレジャーダイビングを実施することができる技能と知識があることを認める「ライセンス」に相当するCカードというカードが1枚あります。

そして、ダイビングのレベルに応じた様々な技能講習を修了したことを認めるカードが複数、スキューバダイビングのガイドやインストラクターであることを認めるカードがレベルに応じて複数、あります。

しかも、それぞれの指導団体により、その内容やレベル、認定基準は違います。

この時点でかなり複雑だなという印象を持たれるでしょう。そうなのです、ダイビングライセンスの仕組みはちょっと複雑なのです。

しかし、複雑に見えますが、ダイバーのためにきちんとした意味があります。
具体的にどのようなライセンスの種類があるのでしょうか。

具体的なライセンスの種類とは

では、具体的にはどんなライセンスがあるのかを見ていきましょう。

SHARK EYEが取り扱っているSSIという指導団体の基準を参考にすると以下のようなライセンスの種類があります。

ライセンスの種類ダイビング可能な最大深度講習日数、その他
スクーバダイバー-12M2日、オープンウォーターをとる時間がない場合などに取得できるコース。-12Mの浅瀬のみでダイビングしたい場合に適用可能だが用途はかなり狭い。
オープンウォーターダイバー-18M3日(スクーバダイバー取得者は1日)、-18Mまでダイビング可能で、いわゆるCカードであり、ダイバーという場合には一般に広く通用するライセンス。
スペシャリティダイバーオープンウォーター(-18M)またはアドバンスドオープンウォーター(-30)に準ずる講習は基本1日、ナイトやボートなどのスペシャリティ技術について学ぶことができるコース。(ボートダイビング、ナイト&視界不良、ナビゲーション、サーチ&リカバリー、ディープダイビングなど)
アドバンスドオープンウォターダイバー-30M2日、アドバンスドオープンウォーターをもっているダイバーはレジャーダイビングで要求される基本的な技能を有しているとみなされる。-30Mまでのダイビングでレジャーダイビングで楽しめる範囲はほぼ網羅できる。
ナイト&視界不良スペシャリティオープンウォーター(-18M)またはアドバンスドオープンウォーター(-30)に準ずる1日、夜の生物の生態を観察するために必要な技量を身に付けるためのスペシャリティ。視界不良時などのリスク回避にも応用できる。
ディープダイビングスペシャリティ-40Mレジャーダイビングで認められている最大深度の-40Mまでのダイビング技術と知識を身に付けることができる。
ダイバーストレス&レスキュースペシャリティオープンウォーター(-18M)またはアドバンスドオープンウォーター(-30)に準ずる1日、ダイビング中にかかるストレスへの対処法やレスキュー技術を習得します
ボートダイビングスペシャリティオープンウォーター(-18M)またはアドバンスドオープンウォーター(-30M)に準ずる1日、ボートダイビングに関する知識とスキルを身につけます。
ダイブマスターアドバンスドオープンウォーター(-30M)に準ずる日数はスクールによる。プロフェッショナルダイバーの登竜門。ガイドができるようになる。
インストラクターアドバンスドオープンウォーター(-30M)に準ずる日数はスクールによる。ダイビング技術を教えることができる。

少し大きく括っていますが、このようなライセンスの種類があります。多くの方がダイビングのライセンスというと一つしかないと思われていますが、実際にはダイビングのレベルやスキルに応じて幾つかの種類に分かれているのです。

なぜライセンスの種類は分かれているのか

なぜこのようにライセンスの種類が分かれているのか。素朴な疑問がでてきますよね。
一つライセンスを取れば、それでいいじゃないかと言われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ダイビングの技術というものは難しくはありませんが、一定の段階を経て上達していくものです。これはどんなスポーツでも同じですよね。

ダイビングにおいて、このようにレベル分けやスキル別にしているのは、ダイビングの技術向上のためにはステップバイステップの段階的レベルアップが必要ということと、それぞれのスキルについてしっかりと習得すべき内容が多いということでもあります。

従って、あえてライセンスを種類を分けて、それぞれに専門課程としてのスペシャリティコースを用意したり、レベルアップして一定の基準レベル以上に到達したことを証明するアドバンスドオープンウォーターのライセンスコースが用意されているのです。

もしも、このように分かれていなければ、オープンウォーターライセンス取得の受講者は一度の講座でダイビングで全てを学ぶ必要が出てきます。

どんなに優れた人でも、ダイビングに関するスキルを一度に全て習得することは不可能です。ですから、ライセンスの種類は分けられて設定されています。

より重要なことは、海の状況は一定で安定しているわけではないので、様々な海の変化に対応しながらその経験も含めてレベルアップしていく必要があるということです。

ライセンスの種類とレベルアップ

ダイビングの本数を潜れば潜るほど、ダイビングの技術は向上していきますが、一方で上達するためには経験と合わせて必要な知識も付加していく必要があります。

スキルと知識はセットで、そこに経験が加わって、初めてレベルが上がっていき、自由自在な水中での動きや安全なダイビングが実現できるのです。

水中写真の良し悪しも、水中写真の撮影技術だけではなく、基礎的な技術レベルの向上が欠かせません。これらが連動して初めて、自分が望むような水中写真が撮れるようになるのです。これはダイビング全般に言えることです。

ライセンスの種類がわかれていて、それぞれのコースを受講すれば自動的にレベルアップするということではありませんが、それぞれのライセンスコースを受講することにより、新しい知識と経験はプラスされます。

それぞれのレベルや志向により、必要なライセンスコースは違います。どのライセンスが必要かということについては、インストラクターや先輩ダイバーに相談しましょう。

たくさんのライセンスコースがありますが、自分のペースでレベルアップをして楽しく快適なダイビングができるようにしていきましょう。