【解説】ダイビングライセンス(Cカード)取得費用の相場と理由

ダイビングのライセンス(Cカード)の取得でほとんどの方が質問されるのが

一体、いくらかかるんですか?

ということ。そう、ライセンスを取るのにかかる費用のことについて。

費用のことを聞かない方はほぼいません(仕事でどうしても取らないといけない、などの理由がある場合を除いて)

最初に答えを言ってしまうと、

一般的に取得において必要となる講習関連費用の総額は、6-7万円(税込)が相場です。

しかし、なぜこのような金額になるのでしょうか。他には必要にならないのでしょうか。

どんなスポーツでも少なからず始めるにはコストがかかります。
ランニングであればランニングシューズ、スキーならスキーの板にスキーウェア。。。

ダイビングは海という特殊な環境で行うスポーツなので、少し特殊な器材を要し、その分費用もそれなりに投資が必要です。

また、安全面を考慮して知識とスキルについて講習も他のスポーツに比べたら、しっかりしたものになっています。
海という特殊な環境で行う、自然相手のスポーツなので、ここはいかんともし難いですが、そこは必要な登竜門。

一方で、決して安いとは言えない費用となので、しっかり納得してからどうするか決めるのが重要だと思います。

ここでは、ダイビングのライセンス(Cカード)を取得するにあたって
どのくらいの費用がかかるのか、なぜそれだけかかるのかの背景を、解説してみたいと思います。

※ここではCカード、つまり、オープンウォーターダイバー(OWまたはOWD)の講習を想定しています。

取得にかかる費用の目安

ダイビングのライセンス(Cカード)の取得にあたっての費用総額は、最初に書いたとおり、相場として、6-7万円(税込)です。

この相場というのは取得にあたって、最低限必要な総経費を合計したものです。

以下に解説するように、取得に関わる費用として提示されている価格は、実際には、店舗によりバリエーションがあります。

しかし、総合的に考えるとこのくらいの経費がかかると考えておくのが無難です。

スクールやショップによっては、これよりも安い費用を提示している場合もありますし、その逆もあるでしょう。しかし、実際にかかる最低限かかる費用を合計していくと、このくらいの金額をみておいたほうが良いと思います。

「格安」「業界最安」と銘打っていても、見えないところでいろいろプラスになって、結局相場の金額になっていた、ということも少なくはないです。

ダイビングにかかる諸経費は、本質的にどこでも同じように一定の費用がかかるはずなので、その費用よりも安い金額で提示されている、ということは誰かが努力して安く提供できるようにしているか、あえて安くして他のタイミングで費用を回収しようとしているか、あるいは趣味でやっているので価格が適当か、のいずれかと考えるのが無難です。

したがって、「格安」の意味はよく考える必要があります。

なお、相場は6-7万円ですが、ダイビングのショップやスクールによっては、ライセンス取得費用として、4-6万円(税込)の範囲で提示されている場合もあります。
その結果、4-8万円くらいの幅が生じることになります。

どうしてこのように表示に幅があるのでしょうか。
実は、この費用をよく見ていくといくつかの内訳があることがわかります。

それではなぜ店舗により違いがあるのか、価格に幅があるのか、その理由をみてみましょう。

費用を内訳に分解してみる

ライセンス取得費用と一言で言っても、その中身は大きく分けて以下の4つの要素に分けられます。

1. 講習費用
2. 交通費・宿泊費・食費
3. その他(器材代、水着やインナーウェア、日焼け止め、サンダル、酔止め、個人スポーツ保険etc)

この3つの要素のうち、ライセンス取得で必ず必要になる費用は「1.講習費用」ということになります。
そこに「2. 交通費・宿泊費・食費」、「3.その他」が加わることになり、これらの組み合わせで、必要な費用の総額が変わってきます。

特に変わりやすいのが「3.その他」となり、この部分をしっかり確認する必要があります。
「3.その他」で絶対に必要になるのは、「器材」と「水着やインナーウェア」で、その他は人により必要性が変わります。

注意したいのは「器材」も「水着やインナーウェア」もライセンス取得に合わせて、購入しなければならないわけではない、ということです。水着(ウェットスーツの場合)やインナーウェア(ドライスーツの場合)も手持ちのもので使えますし、器材はレンタルがあります。

特に器材は決して安くない買い物です。最初から高額な器材の購入を前提にするのではなく、レンタルという選択肢を頭に入れておきましょう(レンタルがない店舗もありますので、確認しましょう)

ライセンス取得講習の受講費用を考える上で最も重要なポイントは、「総費用で考えていくこと」です。

例えば講習費用が5万円で提示されていたとして、「2. 交通費・宿泊費・食費」が1.5万円かかれば、それで合計6.5万円となります。さらに「3.その他」として、レンタル費用や酔止めなど購入すれば、追加で費用がかかります。

海外などのリゾートで取得する場合は、「2. 交通費・宿泊費・食費」もそれなりに掛かります。
したがって、常に「総費用」で考えて比較をしていく必要があります。

以下、それぞれの費用内訳について見ていきます。

講習費用

この講習費用は通常店舗により変わるものではありませんが、店舗が所属するダイビング指導団体(PADIやSSIというライセンスを発行している組織のことです)により微妙に違う場合もあります。

講習費用をさらに分解すると以下のような費用になります。

 講習費
・ダイビングに関する知識を習得する学科講習の費用
・プールでの実技練習を行うプール講習の費用
・プール講習後に行う海洋での実地講習費用
・学科講習で使用するテキスト教材の費用
※最近はアプリやオンライン上でのデジタル教材であることが多い
・ダイビングするたびに記録をつけていくために使うログブック
※ログ:英語のlogのこと。「記録」という意味。
・講習修了時に発行されるダイビング ライセンスの発行申請料

 実習費
・講習で使うダイビングサービスの施設使用料
※「ダイビングサービス」とは、現地の海でダイビングスポットを管理する組織・会社のことで
空気タンクや器材のレンタル、ボートの手配、ガイドの手配などのダイバー向けサービスを行っている。ダイビングセンターとも呼ばれる。
・特定のダイビングエリアを利用する場合の入海料
※海域を管理管轄する組織や漁協等が設定している費用で300-800円前後。
ダイビング関連を含む海洋施設や環境の保全などに利用されます。
日本では漁業協同組合が一般的です。一部海外にも入海料のような制度はあります。
・空気タンク(ボンベ)のレンタル料
※管理された施設・装置で圧縮空気を作る必要があるため、レンタルとなります。
・ウエイト(重り)のレンタル代
※ウェットスーツなど浮力のある器材を着ますので、ウエイトが必ず必要になります。

これらは講習費と実習日はライセンス取得講習を受けるにあたって必須のものとなりますので、必ず費用としてかかってきます。

講習にかかる費用はよく見ていただくとわかりますが、講習は通常、実技講習だけで3日間かかります(プール1日、海洋実習2日)。
これに学科講習が入りますので(最近は自習スタイルも増えていますが)、およそ4日間の工程となります。

Cカード取得にあたって総額は6-7万円が相場と述べましたが、大半はこの講習費用です。

これが高いか安いかの判断としては、他のスポーツと比較してみるとわかります。

例えば、ゴルフのレッスンは3千円から1万円が相場と思いますが、レッスン時間は1-2時間となります。

スキーやスノーボードでは5千円から1万円が相場となりますが、レッスン時間は1日(ただし、実際のレッスンは午前午後合わせても3−4時間)となります。同じ海のスポーツのサーフィンでは、6千円−1万円が相場で、レッスン時間はおよそ3−5時間です。

ダイビングの場合、まず時間としては4日間あり、1日の時間は5-6時間程度になります。

これらを時間単価にして比較してみましょう。

・ゴルフ:3000~10000円/1-2時間=1500~5000円/時間 

・スキー/スノボ:5000~10000円/3-4時間=1250~3000円/時間

・ダイビング:2500円/時間(4日間6万円、1日6時間の場合)

つまりレッスン時間単価としては他のスポーツに比較しても、あまり変わらない時間単価ということになります。

なお、通常は3日間かかる実技講習の部分を「格安」と銘打って2日間で済ませるスクールもあり、1日減った分、費用も安く提示される場合もあります。しかし、本来は3日間かかるところを2日にするということは、費用は安くても、カリキュラムは詰め込みになりますし、ダイバーにとっては良いことばかりではありません。

ライセンス講習には1日に必要な経費を積み上げて計算されており、金額はそれに応じていると考えた方が良いでしょう。価格を優先して決める場合には、よくこの辺りの検討が必要です。

交通費・宿泊費・食費

ライセンス取得費用の中で、交通費や宿泊費などは個々人の考え方や状況により差が出やすい部分です。
どこでライセンスを取得するのかで大きく異なります。

例えば、海外リゾートや沖縄などの離島でライセンス講習を受講する場合は、飛行機代などの渡航費及び宿泊費がかかります。

もちろん、それだけでは済まず観光もされるでしょうから、その費用もかかります。ただ、何を目的にするかによりますし、観光もせずに講習だけ受けて帰国する、というストイックな方は少ないでしょうから、その辺はバランスが必要ですね。

一方、日本国内のお住まいの近くの海で取得講習を受けられる方は、交通費も宿泊費も比較的抑えられるでしょう。
例えば、関東在住で伊豆半島で取得をお考えの場合は、以下のような内訳になると想定されます。
・交通費:東京駅から伊豆(伊東)まで、電車なら片道約2300円、特急なら約4000円、新幹線は約5000-6000円
・宿泊費:宿泊施設によりますが、格安で約4-5千円/泊、通常安くてもは7-9千円/泊
・食費:その人により変動。

上記から、少なくとも約2万円程度は見ておく必要がありそうです。

交通費、食費や宿泊費については個々人の考え方に大きな差がでる部分です。
人によってはとにかくリラックスしたいので、ゆっくり出来るホテルで、という方もいれば、みんなでワイワイ楽しめるような場所が良いという方もいらっしゃいます。
このあたりは個々人の考え方が優先されるべきだと思います。

なお、クラブハウスやダイバーズハウスなど宿泊施設を併設しており、比較的安価に宿泊できるサービスを展開しているダイビングショップもありますので、検討してみましょう。

その他の費用

ライセンス取得において最も差が出やすいのが、このその他の項目です。
特に差が出るのが器材です。

まず、海の中という特殊な環境で行うスポーツなので、器材も陸上では使わないような特殊な器材を使いますし、精巧につくられたものなので価格も高めです。ただし、その価格はピンキリで、素人ではわかりにくいことが多いです。

器材を購入する場合は、どの器材をどこまで買い揃えるか、どのくらいの価格帯の器材を買うかによって大きく異なります。マスクやフィンなどの軽器材なら約2-4万円となりますし、さらにレギュレーターなどの重器材だと約10-50万円ということになると思います。ウェットスーツも、性能によりピンキリですが、約4-6万円は想定しておく必要があります(それ以下はお勧めしません)。

器材をレンタルする場合は、1日1-1.2万円程度でフルセットを揃えることができるのが一般的です。
このレンタル費用についてはライセンス取得時に含めるところ、含めないところ、あるいはサービスとして無料にする場合などがあります。スクールやお店によって考え方は違いますのでよく確認しましょう。「格安」となっている場合にレンタル費用がただということもあります。

 器材のレンタル一式の例
・BCD(浮力調整)
・レギュレーター(呼吸)
・ウェットスーツ/ドライスーツ
・マスク
・スノーケル
・フィン
・グローブ
・ダイビング用ブーツ
・その他必要な器材一式
※店舗によりダイブコンピュータを貸してくれる場合もありますが、
ゲージと呼ばれる空気圧を見る計器がすでにレギュレーターに付属していますし、
浅場での講習がほとんどなので必須ではありません。しかし、あると海では便利です。

器材のレンタルなどはお店による努力でカバーできる範囲で、その点は店舗の考え方の違いが出ます。

気を付けておきたいのは、ある程度の高額器材購入が前提となったディスカウントや、講習期間が2日未満になることを前提にした相場の価格帯よりもグッと安い価格のもの。相場の価格帯から離れるということには、それなりに理由ががあると思ってしっかり確認し、納得した上で申し込みしましょう。

その他の費用としては、水着やインナーウェア、日焼け止め、サンダル、酔止め、個人スポーツ保険などがあります。

まず必ず必要になるのは、ウェットスーツの場合は水着、ドライスーツの場合はインナーウェアです。これはどんな場合でも必要になりますが、ダイビングのために買い揃える必要はありません。手持ちのもので使える場合が多いので、スクールや店舗によく聞いて確認しましょう。

日焼け止めは女性や肌に弱い方は必須ですね。海は光の反射をしますので、日焼けが強くなりがちです。特に講習時は水中だけでなく、プールや水面にいることも多いので、紫外線を浴びやすい状況になりがちです。必ず持っておくようにしましょう。

秋から春にかけてはドライスーツを使う場合がありますが、顔だけでも油断できません(雪山と同じです)。

サンダルや酔止め、海パンなどは個人によります。
海の中では怪我しないようにブーツを履きますが、陸上ではそのブーツは脱ぐのでサンダルはあったほうが便利です。酔い止めも海になれない最初はあったほうがいいですね。

個人スポーツ保険は、心配な方は加入をしておきましょう。

その他、女性の場合は化粧水などのお肌のお手入れ用品、場合によっては生理用品なども必要となります(女性の方のよくあるお悩み・質問はこちら)

結局どう費用を考えたらいいかは、何を重視したいかで決める

ここまでダイビングライセンス(Cカード)の費用についてみてきました。
では、いろいろな要素がありますが、結局どういうふうに考えたらいいのでしょうか。

費用に関する考え方は、正直ヒトそれぞれです。

そもそもダイビングを始めたい理由がさまざまで、本気で趣味にしたいかどうか、とりあえずやってみたい、ダイビングを通じて新しい友人との出会いを求めている、とにかく海が好き、水中カメラで写真を撮影したい、いろんな方がいます。

それぞれの目的に応じて、自ずと出せる予算も変わってきます。

ご自身が何をやりたいか、何を重視するのかで予算が決まり、その中でライセンス(Cカード)取得がどういう意味を持つのかが変わります。
本気で趣味にしたい人にとっては、とにかくしっかり学びたい、上手になりたいと思うと思いますし、とりあえずやってみたいという人は出来るだけ予算を抑えたいと考えるかもしれません。

ご自身の目的とそれに応じた予算設定が大事になります。

これまで解説したきたように、ライセンス講習自体の費用は、さほど大きくは変わりません。
「交通費・宿泊費・食費」、「その他」は、本当にバリエーションが出ます。
そしてそれには「ダイビング自体をどう楽しみたいのか」という意識が反映されます。

・趣味だけど、リゾートでのんびり、たまにダイビングしたい。
・いろんな海で潜れるようにスキルアップして世界の海を楽しみたい。
・ダイビングのスキルを極めたい。
・行きたいときに海に行って非日常の海の中を楽しみたい。
・会社とは違うコミュニティで、世界を広げたい。
・スキルはスクールで完ぺきに、でも楽しむのは個人で別途好きにしたい。

以上のように色々な考えがあります。

ライセンスを取得した後のダイビングスタイルとして重視したい項目を考え、それを反映している・実現可能なダイビングショップ・ダイビングスクールを選ぶというのもありですし、一般的だと思います。

あなたのダイビングライフとして重視する項目を考えて、それに見合うスクール・スタイルを選びましょう。