ダイビングライセンスの取り方④:「アドバンス」って何?

スキューバダイビングによる水中世界への入り口として、まず最初に必要なのは「オープンウォーターダイバー(OWまたはOWD)」のライセンス(Cカード)です。ダイビングスクールやダイビングショップなどで所定の講習を受けることで取得できます。

これで晴れてダイバーデビュー。

しかし、オープンウォーターダイバーを取ったその先には、「アドバンスド・オープンウォーターダイバー(AOW)」というランクのライセンス(Cカード)が存在します。

この「アドバンス」と呼称されるランクとは一体なんなのでしょうか。

オープンウォーターダイバーになって直ぐに「アドバンス」の講習を受けることを薦められるなんてことも、ダイビングの世界ではよくあります。

「せっかく頑張ってオープンウォーターダイバーになったのに、まだその先が何かあるってオープンウォーターダイバーじゃ、じつはダメっていうこと?」というこおt声も聞かれます。

でも、そんなことは全くありません。オープンウォーターダイバーでも十分にダイビングを楽しめます。

ただし、敢えて別のランクとしてアドバンスド・オープンウォーターダイバーが設定されているのには、ダイビングをより安全に且つ快適に楽しむという観点において、それなりの理由があるのです。

では一体、アドバンスド・オープンウォーターダイバーとは何なのか。今回はこれを考えてみたいと思います。

アドバンスド・オープウォーターライセンスとは?

ダイビングでライセンス(Cカード)を取得した皆さんはオープンウォーターダイバーというランクに認定されたことになります。

水中世界を楽しむために必要なのがCカードということなりますが、オープンウォーターダイバーにはダイビング可能な水深に対して制限がかかります。オープンウォーターダイバーが潜水可能なのは水深18mまでとなります。

ダイビングにおける18mの意味合いを考えてみると、ダイビングにおいて観察可能な魚の数や種類として、その大部分が存在する範囲は、水深で約30mまでと言われていますので、非常にアバウトですが、ざっくりその60%くらいまでは楽しむことができるということになります。

よくダイビングでイメージされるサンゴ礁や、熱帯魚の大多数が泳いでる場所は基本的に18mよりも浅いところであることが多いので、相当な数の魚たちや水生生物を観察することができます。

では、どうしてアドバンスド・オープンウォーターダイバーが重要だと言われるのでしょうか。

アドバンスドオープンウォーターダイバーの必要性

18mでも十分に深いよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、ダイビングにおいては18mよりも深い場所への潜水もよくあります。18mより浅いところでのダイビングだけだと潜れるポイントが限定的になります。

したがって、ダイビングスポットによってはアドバンスド・オープンウォーターダイバーを持っていないと受け付けてくれないこともあります。場合によってはアドバンスランクのCカードを持っていないとファンダイビングに参加すらできないこともあります。

ダイビングを始めようかなぁと思った理由として、いろんな憧れをもっていたのではないでしょうか。

「青い海を見てみたい」「熱帯魚が見てみたい」というだけではなく、「大きな魚を目の前で見てみたい」とか「海底遺跡を見に行きたい」とか、「ブルーコーナーみたいな青くて深い海に潜ってみたい」とか、そんなことを考えていましたよね。しかし、オープンウォーターダイバーのCカードではそれが達成できないこともあるのです。

アドバンスドオープンウォーターダイバーのコースでは様々なことが学べるからこそ、よりレベルの高いダイビングスポットへ行くことができるようになるのです。

ではどんなことが学べるのか、みていきましょう。

アドバンスドオープンウォーターダイバーで得られるもの

アドバンスドオープンウォーターダイバーのCカード講習を受けることにより、どんなことが学べるのでしょうか。

まず、30mまでのダイビングが可能な知識とスキルを備えていることが証明として得られます。

18mと30mでは、体にかかる負荷や海の中の様子も全く異なります。深度に応じた体の負荷を理解し、ダイビング時間やどこまで深く潜水するかをコントロールする必要があります。これを理解していないとダイビングを安全に潜ることは難しいです。

何を気をつける必要があるのか、どのようにしたら安全にダイビングができるのかをコースを通じて学んで実践により確かめることができます。深いところから浅いところまで移動する場合には、水圧などから受ける体の負荷をコントロールする必要がありますので、どのようにしてダイビングを行うのか、その計画を立てることも学ぶことができ、よりレベルの高いダイバーになることが可能です。

またもう一つは、水中世界のナビゲーションを学ぶことができます。

水中では、陸上と違って360度、前後左右上下、あらゆる方向に活動することができます。まるで空中に浮いているように動ける。これがダイビングの魅力の一つではあります。しかし、一方では方向感覚がわかりにくなるという欠点もあります。まして、水中世界なんて生まれてから活動したことがある人は稀ですし、初めて潜る場所となると余計にわからなくなる。自分がどこにいるのかを掴みにくいというが特徴です。

そのため、アドバンスドオープンウォーターダイバーコースでは水中ナビゲーションという、水中でのコンパスの使い方や水中移動における方向感覚などを身につけることが一般的です。

その他のこととしては、水中での行動をより容易にし、魚のように自在に動けるための必須スキルである「中性浮力」や「ボートダイビング」、「沈船・洞窟ダイビング」、「ナイトダイビング」、「水中カメラ」など、いくつかの事項について深く学ぶことができます。これらを学び実践することでダイバーとしてのステップアップができるようになるのです。

アドバンスドオープンウォーターダイバーになるのは、いつがいい?

最後にアドバンスドオープンウォーターダイバーになる時期について。

これは早くても遅くても大丈夫だと考えています。

マイペースで、自分が18mよりも深いところも見てみたい、もっと安全にダイビングできるようにしたい、水中カメラやナイトダイビングなど、さらにダイビングを深く多様に楽しみたいと思ったら、アドバンスを受けてみるといいのではないでしょうか。

ダイビングスクールによっては、オープンウォーターダイバーのライセンス取得後の比較的早い時期にアドバンスの受講を進めていますが、これは早い段階のほうがオープンウォーター・ダイバーコースで習得したスキルや知識を忘れないうちに、次のレベルの知識を身に着けることができると考えられる、という面もあります。しかし、必ずしもすぐに受講をする必要はないので、ご自分で良いタイミングを選択するのがいいと思います

PADIやSSI、NAUIなどの指導団体によりアドバンスドオープンウォーターダイバーのコースの基準は異なりますので、所属するダイビングスクールのインストラクターに問い合わせてみるといいと思います。

なお、シャークアイが所属する指導団体のSSIでは、アドバンスドオープンウォーターダイバーというライセンス(Cカード)のコース設定はなく、その認定を受けるには、「ディープダイビング」や「ナイトダイビング」、「ナビゲーション」などの15種のスペシャルティコースのうち4種を修了し(修了要件は各スペシャルティコースにより異なる)、トータルで24本のダイブ経験が必要となります。

他の指導団体の「アドバンス」では、通常は2日間の講習で合計5ダイブ、その5本のダイブ中で「ディープダイビング」や「ボートダイビング」「ナビゲーション」「ドリフト」「ナチュラリスト」などのスペシャリティを受講します(5本中、1本ずつ異なるスペシャリティを受講)。

多くの場合、「ディープダイビング」と呼ばれる30m以上40mまでの深い水深のダイビングのスペシャリティと、「水中ナビゲーション」と呼ばれる水中でのコンパスの使い方や水中ルート・位置の把握を学ぶことができるスペシャリティ、この二つのスペシャリティを含める必要があります。

アドバンスライセンスは一人前の自立したダイバーになるためのステップであり、ダイビングの楽しみ方の幅を広げるためのものです。ダイビングをより楽しみたいと思っている方は、ぜひチャレンジしてみてください。