伊豆で見れる熱帯のカラフルな魚たち

今回は伊豆で見ることができる熱帯のカラフルな魚たち「季節来遊魚」のお話をしたいと思います。

季節来遊魚と言われても、一般には馴染みのない言葉で何だかよくわかんないですよね。
まずは、季節来遊魚とは何かからお話をしていきます。

季節来遊魚とは、夏の季節から秋にかけて、普段は沖縄などの九州以南の、南方の温かい海に生息する種類の魚たち(通称でいう熱帯魚)が、本州南岸に沿って流れる世界有数の暖流である黒潮や台風の影響により、本来は生息域ではない九州以北の本州沿岸に流されてきた魚達のことになります。

詳しいことは確かめられていませんが、南方の温かい海で生まれ卵のまま流されて、本州沿岸で幼魚に成長するか、あるいは小さな幼魚の状態で黒潮に乗って流され、そのまま本州沿岸にたどり着くか、二つの可能性が考えられています。

 
世界でも有数の暖流である黒潮の影響で、主に本州の太平洋沿岸や太平洋側の島では季節来遊魚を季節によって見ることができます。

もともとは沖縄などの海に生息している季節来遊魚。主には熱帯の魚たちなので、その体はとてもカラフルなものが多く、季節来遊魚がくる季節になると海の中がとても賑やかになります。

 
伊豆近海で見ることができる季節回遊魚の種類として代表的なものは、クマノミ、ムレハタタテダイ、チョウチョウウオなどが挙げられます。その種類は多く、非常に多岐なものです。

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わざわざ沖縄や南の島にいかなくても伊豆の海でカラフルな魚達を見ることができるという点においても、私たちは黒潮の恩恵に感謝をする必要があるでしょう。

季節来遊魚として有名なクマノミやムレハタタテダイなどの小さな魚達だけではなく、黒潮に乗ってくるという意味で季節来遊魚として考えてもよいものに、大型の回遊魚も含まれます。
 
 
例えば、マンタやジンベエザメなど、南の島にしかいないとと思われているような大きな魚たちも黒潮に乗って伊豆周辺の海で見ることができます。当然海が温かい時期に海の中での遭遇例が報告されますので、季節来遊性があると考えていいのではないかと思います。

季節来遊魚という黒潮の恩恵によって、伊豆では多くの魚たちを見ることが出来ると言っても過言ではないかもしれません。

かわいくてカラフルな季節来遊魚たち。しかし、その季節来遊魚には悲しい運命が待っています。

もともとは一年中水温が高い南の海に生息している魚たちなので、夏の時期から秋にかけての水温が高い時期は良いのですが、伊豆を含めて多くの本州沿岸の地域のように冬場から春先まで水温が下がってくる時期がある地域では季節来遊魚は生きていくことができません。

 
元々は南の魚ですから、水温の低下に対応することができずに制御になる前に命を落としてしまうのです。

 
このように季節来遊魚はダイバーたちにとっては楽しみの一つなのですが、魚たちにとっては非常にチャレンジングな海の旅なのです。

しかし、季節来遊魚の中には越冬して伊豆に定着するものもいます。

例えば、クマノミ。クマノミのある種は、一年中定着している個体が伊豆では確認されていて、冬の間も観察することができますし、卵を産んで育てる姿も確認することができます。

また、伊豆の特定の場所では立派なサンゴをみることが出来ます。ちなみにサンゴは生息域が北に広がってきていると言われていて、温暖化の影響が疑われています。

このように、近年は海水温の上昇により、流れ着いた先でも季節来遊魚が越冬するケースが見られるようになり、魚たちは生息域を広げつつあります。

水温の上昇もあるかもしれませんが、魚たち自身ももしかすると低い水温に対応するタイプの進化を遂げている可能性もあります。生命の順応力は人間が思っているよりも高いのです。伊豆では季節来遊魚を通じて、生命のダイナミックさを感じることもできます。

しかし季節来遊魚の多くの種は、やはり水温の低下に耐えることができず、冬になると姿を消してしまいます。ですから、夏から秋にかけてのみ見られる季節来遊魚は、非常に貴重な儚い命なのです。

 
そんな生命のドラマをしっている、伊豆ダイバーたち。季節来遊魚が現れ始めると多くのダイバーか、その魚たちに愛着を示して、大事に観察をしています。季節来遊魚は南の島の魚たちであり、多くの場合、幼魚であることが多いので、小さくてとっても可愛い姿をしているのです。

魚は小さいころは成魚とは異なるカラフルで特徴のある色をしていることが多いので、ダイバーの中でも幼魚自体が人気があります。

ちなみにダンゴウオという北からやってくる季節来遊魚もいます。伊豆には黒潮(日本海流)が流れ込みますが、冬場は水温が下がり、北から親潮(千島海流)に乗ってやってくる北方の魚も流れ着く場所でもあるのです。

ダンゴというよりもスライムのような可愛いらしい体をしたダンゴウオ。その愛らしい姿は4月から5月くらいの春先のみしか見ることができません。彼らもまた季節来遊魚なのです。

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このように季節来遊魚は、伊豆のダイバーにとって欠かせない生き物であり、生命のダイナミックな営みを教えてくれる貴重な存在なのです。